言霊(ことだま)【美しい日本語】

言霊(ことだま)の由来

日本では、古来より言葉には霊力が宿り、口にした言葉によってその通りの現実が引き寄せられると信じられている。

言霊は、言魂(ことだま)とも云われ、言葉に魂が宿ると表現される。

良い言葉を使うと良いことが起こり、悪い言葉を使うと悪いことが起こる。

とても単純だが、そこには日本独特の深い根源が由来する。

 

万葉集で柿本人麻呂が詠んだ短歌にその思想が記されている。(下段出典)

磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ

(磯城島の日本の国はことばの魂が人を助ける国であるよ。無事であってほしい。)

 

島とは水中の地でなく、現在の奈良県桜井市金屋付近を大和の国と呼ばれていた。

磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ

番号 13-3254
漢字本文(題詞) 反歌
漢字本文 志貴嶋倭国者事霊之所佐国叙真福在与具
漢字本文(左注) 右五首
読み下し文(題詞) 反歌
読み下し文 磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ
読み下し文(左注) 右は五首
訓み しきしまのやまとのくにはことだまのたすくるくにぞまさきくありこそ
現代語訳 磯城島の日本の国はことばの魂が人を助ける国であるよ。無事であってほしい。
歌人 柿本朝臣人麻呂之歌集 / かきのもとのあそみひとまろのかしふ
歌体 短歌
時代区分 不明
部立 相聞歌
季節 なし
補足 柿本人麻呂/かきのもとのひとまろ/柿本人麻呂【柿本朝臣人麻呂歌集】
詠み込まれた地名 不明 / 不明
関連地名 【故地名】磯城島
【故地名読み】しきしま
【現在地名】奈良県桜井市
【故地説明】奈良県桜井市金屋付近。長谷の谷の入口をなす一帯。崇神天皇の磯城瑞籬宮、欽明天皇の磯城島金刺宮があった。大和の形容辞に、また大和の意にも用いた。
【故地名】大和の国
【故地名読み】やまとのくに
【故地説明】(倭・日本)大和朝廷の勢力のおよんだ範囲をあらわす語で、奈良県天理市大和(大和神社がある)あたりの地方名から起こり、大和中央平原部、奈良県全体、近畿一帯から日本全国の総名へと発展したという。集中の歌は大和中央平原部・大和国(奈良県全体)・日本国の総名など種々に用いている。
【地名】磯城島:大和の国
【現在地名】奈良県桜井市金屋付近。長谷の谷の入口をなす一帯。:日本全体。

出典 奈良県立万葉文化館

国号の発祥の地《磯城島(式島・敷島)の顕彰》

磯城島の地は紀元前から68年という長い間、崇神天皇の磯城瑞垣宮があった。

この御代に神皇分離が行われ、天照大神を檜原神社に祀った。それ以来、この付近が上古の都の地になっていたので名高くなった。敷島の大倭と続くのは、敷島の地が大倭郷に属している処から、石上布留というのと同じ枕詞となった。

島とは水中の地ではなく、宮廷領の一区域を指していう語で「しきしま」は後には、大和-日本の国を指し示す言葉になった。万葉集に「磯城島の大和国は言霊の助くる国ぞ真幸くありこそ」という歌がある。歌意は、「大和の国は言葉に霊力がひそんでいる国だ。私が今、こうして祈っているのだから、効き目がないわけがない。無事帰っていらっしゃるに違いない」と海路の無事を祈った歌である。

次に「敷島の大和国の明けらけき名に負う伴の緒心努めよ」というのがある。

これは、大伴家持が、我々大伴氏は潔白な心で仕えて来たとの評判を持っているのだ。疑いをかけられるようなことがあってはならない。心を励まし一所懸命まごころの行いをせよ、と一族を喩した歌だ。

ここ瑞垣宮から東南、初瀬川と粟原川との間に欽明天皇の磯城島金刺宮があった。この御代の6世紀半ばに、仏教が初めて公式に我が国に渡ってきたのである。いわば当地は、国際都市として大いに繁栄していたのだった。

古代の市場、海石榴市のあったのもこの地で、平成5年皇太子殿下御成婚記念事業の一つとして環境整備地に選ばれた。このことはまことに意義深いことではなかろうか。

この付近で少年時代を過ごした保田與重郎氏は、都の名が国の称えとなった例はその先にもあとにもない、磯城島金刺宮こそ、大倭朝廷の力あふれてなりたった大なる都だった。と後年しるされていた。

かくのごとき歴史的感情にいろどられたこの雄大な景観は、日本広しといえどもここ以外にはない。地球環境遺跡地としての保存は、こういう処をこそ、現状を汚すことなく、子孫に伝えたい。

出典 桜井市

神道における唱えことば

神社にお参りする際に具体的な願い事を声に出して唱えるのも、こうした信仰に基づくもので、願い事をする前に、自らを清めるため次の言葉を唱えるとよいとされている。

「祓(はら)え給(たま)い、清め給(たま)え、神(かむ)ながら守り給(たま)い、幸(さきわ)え給(たま)え」
(お祓いください、お清めください、神さまのお力により、お守りください、幸せにしてください)

神道では、「自らの穢(けが)れを祓い清める」ことが、信仰的にも神さまに近づくための大切な行いとなっている。

出典 神社本庁