【鹿児島県の言い伝え】食物のことわざ

出典 鹿児島県

燗冷まし

「有(あ)ってよし冷(ひ)やでよし燗冷(かんざ)ましでよし」
仕事が終わってから飲む酒はうまいので,燗をつけてもいいし,冷や酒でも良い。酒がなければ昨夜の燗冷ましでも良い。

米(こめ)

「有(あ)っ時(とき)ん米(こめ)ん飯(めし)」
米があるときは無計画に米の飯だけ食べて,無くなれば麦やアワだけという生活をしてはいけない。物はあるうちから計画をたてて節約をしなさいという意味。

魚の骨

「魚(いお)ん骨は下手(へた)がおろしたのを買え」
魚の骨は,下手が魚をおろしたのを買うと,骨に身がたくさんついているので良い。

魚(いお)

「魚(いお)ん番に猫」
猫に魚の番をさせると魚をくわえて逃げてしまう。わかりきった無駄なこと。

「石原どんの投げ塩」
石原という島津家の料理頭は,塩などは目分量で投げ入れるだけで味が決まるほどの料理の名人といわれた。料理の味付けが良いときにほめる言葉として使われる。

「急(いそ)っ鍋(なべ)たぎらず」
煮物を急いで作るときに,何回も蓋をとって煮え具合を確かめようとするとかえって熱が逃げてしまって煮えない。待つべき時に待つような辛抱が必要だ。

吊大根

「従兄弟(いとこ)と吊大根(ついでこん)な煮(に)たうえ煮(に)れ」
いとこ同士は顔が似た方が親しみが出ていいし,吊り大根は時間をかけて煮るほど柔らかくておいしくなる。「似る」と「煮る」をひっかけたもの。「吊ぃ大根」は大根を干して乾燥させたもの。

ご飯と汁物

「大釜(うがま)ん飯に小鍋(こなべ)ん汁(しい)」
御飯は大釜で炊いた方がおいしいし,汁物はその反対に小さい鍋で煮た方がおいしい。

「大釜(うがま)ん底ん飯」
大釜の底の方には,空っぽになったように見えても,かき集めると結構御飯が残っているものだ。無いようで有るという意味に使う。

遠慮

「遠慮(えんじょ)は腹にゃたまらん」
遠慮をしていたら,腹がふくれませんよ。御馳走をしているのに客が食べようとしないときに,ハシを取るようにすすめる言葉。

温かい食事

「おそか者(もん)な温(ぬ)っか物(もん)にゃのさらん」
何をするにも動きの鈍い人は,食事も温かいものにはありつけない。

お茶

「お茶と情けは濃(こ)いごいと」
薄いお茶を客に出すのは失礼にあたる。お茶も情けも濃い方が良い。

豆もやし

「おやしゃ豆じゃ火おこしゃ竹じゃ」
豆もやしは豆で,火おこしは竹でできている。当然のことだという意味。「おやし」は豆もやし,「火おこし」は火吹竹のこと。

「辛(か)れ汁(しい)ゃちっと甘(あ)め汁(しい)ゃどっさい」
塩辛い汁は少し食べなさい。甘い汁はたくさん食べなさい。「ちっと」は少し,「どっさい」はたくさんの意味。

川蟹

「蟹(がね)の生焼(なまや)きゃ食傷(しょっしょ)んもと」
川ガニを食べるときは,生で食べると食あたりを起こすので,よく火を通してから食べなさい。

「蟹(がね)に大槌(どんじ)」
カニを大槌でたたくとぺしゃんこになる。なにもかもうまくいかない時のたとえとして使う。

「川は皮から海(うん)は身から」
川魚は皮の方から焼いた方がよい,海の魚は身の方から焼いた方が良い。魚を焼くときのこつを教えている。

重箱

「空重(からじゅ)で戻すな」
重箱に入れた食べ物を貰ったら,空箱で返さずにかならず何かお返しの品を入れて返しなさい。

味噌

「近所(きんじょ)ん声(こえ)と味噌(みそ)んこえとはのさん」
あることないことを言いふらす近所のうわさは困ったものだが,味噌の固いのも料理に使いにくくて困る。「のさん」はつらい,困るの意味。

「腐(くさ)ってん鯛(て)の魚(いお)」
タイは少々腐っていても食あたりをしないと言われている。落ちぶれても堂々としている人のこと。

米・魚

「米(こめ)ん飯(めし)に魚(ぶ)」
昔は米の飯は貴重であった。魚もごちそう。米の飯の時に魚をおかずにすると,米飯がいくらあってもたりないと言われた。

どんぶり

「仕事ちゃ小皿で飯ゃどんぶい」
仕事の手伝いに行ってもあまり仕事はせずに,食事になるとたくさん食べる人を皮肉ったもの。「どんぶぃ」はどんぶりのこと。

「七斤(しちきん)と七斤(ななきん)」
言い方は違うけど,結局は同じことだという意味。

御馳走

「御馳走(しょゆ)と下り坂(くだいざか)は走らん者(やち)ゃおらん」
下り坂は走ろうと思わなくても自然と足が速くなるし,ご馳走に招かれたときも足取りが速くなる。

御馳走

「御馳走(しょゆ)は一番馳走(いっばんしょゆ)風呂は二番風呂」
ご馳走に招待されたときは一番先に行かないと座る場所もなく料理も冷めているが,お風呂は二番目に入った方が湯加減がよい。

焼酎

「焼酎(しゅちゅ)はヘソから下(した)い飲め」
焼酎を飲むときには,飲んだ焼酎がへそから下にくるぐらいがちょうど良い。飲み過ぎは良くない。

焼酎

「焼酎(しゅちゅ)ん座(ざ)は二番小便(にばんしべん)で戻れ」
焼酎を飲むときは,二回目の小便をもよおした時に帰りなさい。それ以上長居をするとろくなことはない。

ぼた餅

「重箱(じゅばこ)んぼた餅(もっ)」
重箱の中のぼた餅は,ふたを開けてみないと何個入っているか分からない。分からないことを聞かれたときに,このことわざを使った。

「常住(じょじゅ)正月(しょがつ)や餅(もっ)が無(ね)」
いつも正月みたいに贅沢な暮らしをしている人は,正月が来たときは人並みなことができない。物事のけじめはキチンとしなさい。

コンニャク

「清潔(せいけっ)の後はコンニャク食え」
大掃除の後は,コンニャクを食べなさい。掃除の時に吸い込んだホコリは,コンニャクが吸い取ってくれると言われていた。「清潔」は大掃除のこと。

飯(めし)

「炊(た)ったてん飯(めし)ゃ裏(うら)を打て」
炊きたてのご飯をすぐに食べるのではなく,裏返しにしてしばらくおきなさい。そうするとさらにおいしくなる。

飯(めし)

「たて飯(めし)食うよっか横飯(よこめし)食え)」
上司にへつらうよりも,同僚や友人を大事にしなさい。「たて飯」は上司,「横飯」は同僚・友人

黒じょか(焼酎)

「嶽(たけ)には雪下には黒じょか」
山に雪が積もって,沖は荒れ模様。こういう日はあわてずに焼酎でも飲んでゆっくりとしなさい。

豆腐(おかべ)

「旅に出(で)っ時(とき)ゃ豆腐(おかべ)を食え」
旅に出るときにはお腹がすくので,腹持ちの良い豆腐を食べなさい。

「近(ち)けは耳んやっけ遠(と)えは鍋んやっけ)」
近い親戚は,いろいろと小言を言うので迷惑であるが,遠くの親戚もたまたま来たときは泊まっていくので,ご馳走しないといけないので迷惑である。

茶柱

「茶柱(ちゃばしら)が立っと良(よ)か事(こっ)があっ」
朝一番に飲むお茶に,茶柱が立つと縁起がよいと言われている。

米(ごめ)

「盃(ちょ)っ米(ごめ)」
米を炊くときにさかずき1杯の米をすくって取っておく。これがたまっていくと1升2升となっていく。この米を非常の時の備蓄や家計が困ったときの足しにする。「ちょっ」は焼酎を飲むときのさかずきのこと。

アラ(籾)

「搗米(つっごめ)ん中(なか)ぃ一粒(ひとつっ)のアラ」
搗いた米の中にも搗き損ないの籾が1粒や2粒くらい残っているものだ。どんなところにも一人や二人のはみだしものがいる。「アラ」は籾のこと。

漬物

「漬物(つけもん)の石と婿殿(むこどん)は重(お)びよっか上は無(ね)」
漬け物に使う石は重いほど良くつかるし,婿もどっしりとしている方が頼りがいがある。

酢味噌

「情(なさ)けは濃(こ)いごいと酢味噌(すみそ)はゆるく」
人にかける情けは濃いほうが良いし,キビナゴやタケノコにかける酢みそはゆるい方が良い。

「逃(に)げた魚(いお)は太(ふ)て」
釣り損なった魚は大きかったと言うが,誰も見ていないので何ともいえない。

「似(に)おたお鍋(なべ)にゃ似(に)おた蓋(ふた)」
似たもの夫婦のこと。

鶏・猪

「煮鳥(にどい)生猪(なまじし)」
ニワトリの肉は長く煮るほど柔らかくなるが,イノシシの肉は長く煮ると硬くなる。

「飲(の)まんこちゃ疑(うた)ご」
約束をしても,酒を酌み交わさないと信用できない。昔,農村では売買の契約が成立しても一杯飲まないうちは仮契約で,飲んで正式に成立するという風習があった。

残り物

「残(のこ)い物(も)んに福(ふっ)があっ」
一番最初がいつも良いとは限らない。残り物の中に良い物があるものである。

腹八分

「腹八合(はらはちごう)に病(やんめ)なし」
食事は腹一杯食べるのではなく,腹八合ですますのが一番体によい。

サツマイモ

「腹ん減った時(とっ)の甘藷(からいも)ん皮」
腹が減ったときはサツマイモの皮まで食べる。腹が減るのが一番のご馳走だ。

暴飲暴食

「腹(はら)も身の内」
腹も体の一部なので大事にしなさい。暴飲暴食は病気の元。

「飯米(はんめ)と子供(こどん)な余ったよか上はなか」
昔,米は貴重品であったので,米は余るほど良かった。また,子どもは腕白で元気があった方がよい。「あまる」は暴れるとか腕白のことで,米が「余る」と腕白の「あまる」をかけている。

結婚

「一人口(ひといぐっ)ちゃ養(やしな)われんでも二人口(ふたいぐっ)ちゃ養(やしな)わるっ」
独身で生活が苦しくて結婚はできないと思っていても,結婚すれば二人でなんとかやっていけるものだ。

焼酎

「冷(ひ)や焼酎(しょちゅ)と親ん折檻(せっかん)な後(あと)から効(き)っ」
焼酎を冷やで飲むと後から酔いが回ってくる。親の説教のありがたさは親が死んでから後でわかる。

ぼた餅

「ボタ餅(もち)ゃ棚(たな)じゃ」
ぼた餅をしまうところは棚と決まっている。物の置き場所など決まり切ったことを聞かれたときに使う。

蒸し物

「蒸(む)し物(もん)すっ時ゃどしっとすんな」
蒸し物をするときには,セイロなどを使い風通しを良くしなさい。

「物(もの)は言(ゆ)よ梨(なし)ゃ噛(か)んよ」
物事は言いようでうまくいくし,梨はかみかたで次第で甘みが出る。

酢味噌

「物事は固(か)と酢味噌(みそ)は緩(ゆ)る」
物事は適当にしないできちんとしなさい。酢味噌はゆるくしないと使い物にならない。

あんこ餅

「餅(もっ)よっか餡(あん)」
あんこ餅を作るときは,餅よりも餡の方に金がかかる。なにかをしようとする時は,本来の費用以外に経費がかかることがあるので,そこまで計算してやりなさい。

あんこ餅

「餅(もっ)よっか餡(あん)」
あんこ餅を作るときは,餅よりも餡の方に金がかかる。なにかをしようとする時は,本来の費用以外に経費がかかることがあるので,そこまで計算してやりなさい。

団子

「やっけなソマゲあぶれば灰がつっ」
ソマゲ(ソバと芋をこねて作った団子)は冷えるとおいしくない。そこで焼いて食べようとすると灰がついて食べにくい。手に負えないことと言う。

「よか餅(もっ)のつきあげは手水(てみっ)次第(しで)」
いい餅でできるのは,餅つきの時に餅を返しながら水を適量にやる人がいるからだ。