【全国の言い伝え】食物のことわざ

出典 農林水産省

ダイコン

「大根食ったら菜っぱ干せ(ほせ)」
大根の葉のようにいつもはすててしまうようなものでも、まさかの時に役に立つという意味。大根の葉にはビタミン類やカルシウムなどの栄養がたっぷりです。

「大根役者」
大根は消化がよいので、お腹(なか)の調子が悪くなること、あたることはめったにありません。このことから、平凡で、あたらない(うけない)役者をこういうようになりました。

「大根頭にごぼう尻(じり)」
大根は頭の方がおいしく、ごぼうはお尻(しり)の方がおいしいという意味。大根は先の方が辛いので、頭の方が甘く感じられます。また、ごぼうは、お尻の方が組織がやわらかいので、このようにいわれます。

「大根どきの医者いらず」
大根の収穫どきにはみんな健康になり、医者がいらなくなるという意味です。大根はお腹の調子を整え、消化をよくするはたらきがあり、昔から体によいものとされてきました。

カボチャ

「芝居蒟蒻芋南瓜(しばい・こんにゃく・いも・かぼちゃ)」
江戸時代、女の人の好きな物を語呂(ごろ)がいいように、言葉の調子がいいように、並べたものです。同じ意味で「芋蛸南瓜(いも・たこ・なんきん)」というのもあります。

「冬至(とうじ)にかぼちゃを食べるとかぜをひかない」
昔から、1年で一番昼の短い冬至の日にかぼちゃを食べて柚子(ゆず)をいれた風呂(ふろ)に入るとかぜをひかないといわれています。栄養のあるかぼちゃを食べて、寒さが増す冬に備えようという昔の人の知恵(ちえ)です。

「冬至南瓜に年取らせるな」
かぼちゃは夏から秋にとれる野菜で、栄養をそこなわずに保存がきくので、野菜のとれない時期の強い味方でした。そのかぼちゃも冬至を過ぎるころにはいたんでくるので、年内に食べきるようにという教えです。

ナス

「秋なすは嫁(よめ)に食わすな」
年中出まわっているナスの中でも秋ナスが一番おいしいので、姑(しゅうとめ)が嫁をにくんで食べさせないという説や、ナスは体を冷やすので嫁の体を気づかっているという説があります。

「師走筍寒茄子(しわすたけのこかんなすび)」
「師走」は12月のことで、「寒」は小寒(しょうかん)(1月6日ころ)から節分(2月3日か4日)までの約30日をさし、1年のうちでも特に寒い時期です。タケノコの旬(しゅん)は春、ナスの旬は夏から秋です。どちらも旬でない冬場に手に入れることは、昔はむずかしいことでした。このことから望んでもかなわないことをこのようにいいます。

「なすの花と親の意見は千に一つも仇(あだ)がない」
仇とは無駄(むだ)になることをいいます。ナスの花は必ず実になり、無駄になる花はありません。同じように親の意見も必ず役に立つものだという意味です。

ゴボウ

「ごぼうの種まきは柿(かき)の葉三枚」
柿の木の芽に葉が三枚ほど開いたころにゴボウの種をまくとよいという教え。

「酢(す)はなます ごぼうは田麩(たぶ)」
なますは酸味(酢)があってこそおいしくなり、同じようにお麩(ふ)はゴボウがあってこそおいしくなります。料理をつくるときに欠かせない組み合わせのことです。

「ごぼうを同じ土地に二年作らぬ者は馬鹿(ばか)」
同じ土地に同じ作物を続けて作ると病気にかかりやすくなり、収穫量が減ることがあります。ところが、ごぼうは続けて同じ土地で作ってもよくできるのでこのようにいわれました。

サツマイモ

「栗よりうまい十三里(じゅうさんり)」
「里」とは昔のみちのりを計る単位で、1里は約3.9km。
「十三里」とはサツマイモのことです。「クリ(九里)」と「より(四里)」を足すと十三里になりますが、ちょうど、江戸、東京から十三里のところに、サツマイモの産地、埼玉県の川越(かわごえ)があったためです。

ダイズ

「豆名月(まめめいげつ)」
昔の暦(こよみ)で9月13日のお月さまのことをこう呼びます。今の10月下旬です。このほか「栗名月(くりめいげつ)」ともいわれ、このころが豆や栗の「旬(しゅん)」、一番おいしい時期です。

「まめに食うとまめでまる(いられる)」
豆をまめに食べる、よく食べるとまめ(健康)でいられるという意味。ダイズはこうした願いをこめて行事食に使われています。おせち料理に欠かせない黒大豆も「今年1年、まめに暮せるように」という願いがこめられています。

「魔滅(まめ)」
当て字で使われました。大豆には、わざわいや、病気などの「魔」を滅ぼす(ほろぼす)力があると考えられていました。節分の夜に「鬼は外、福は内」と豆をまくのもこの理由からです。

「大豆は米にまさる」
これは、日本でもっとも古い医学書『医心方(いしんほう)』に出てくる言葉です。ダイズは植物なのに、たんぱく質と脂質(ししつ)がたくさんふくまれている作物で、その実力は「畑の肉」と呼ばれるほどです。

カキ

「柿が赤くなると医者が青くなる」
柿を食べると病気にならないという意味で、柿の実を食べるころには病人も減り、医者は仕事がなくなってこまるということです。これは、かぜをひきにくくするビタミンCが柿に多く入っているからいわれたのでしょう。

「雨栗日柿(あめくりひがき)」
雨の多い年はクリがよくでき、日照りの年はカキがよくとれるといわれています。クリは日照りが続くと実がじゅくす前に落ちてしまい、逆に柿は雨が多いと病気や害虫が多くなります。

ウメ

「梅はその日の難(なん)のがれ」
朝、梅干し(うめぼし)を食べれば、その日一日は何事もなく無事に過ごせるという意味。梅干しには悪い菌(きん)を殺したり、疲れをとる効果があります。

「梅干しは三毒を消す」
梅干しは食べものの毒、血の毒、水の毒の三つの毒を消す作用があるといわれています。梅干しは食中毒や水あたりにきく食品です。

コンニャク

「こんにゃくは体の砂払い」
こんにゃくは体の中にたまった砂を出すはたらきがあると考えられていました。実際に、こんにゃくには胃腸のはたらきをよくする食物せんいが多く、うんちがよく出るはたらきを持っています。「胃腸のほうき」とも呼ばれています。

ブリ

「寒ぶり寒ぼら寒かれい」
小寒から節分までの寒(かん)のころに味がよいといわれる魚があげられています。魚は肉と違って季節によって体の成分が変わります。ほとんどの魚は卵(たまご)を産む春に備えて冬に脂(あぶら)がのります。

「ぶりは北風がふいて後にくる」
ぶりは冷たい季節風がふき、海が荒れた(あれた)ときにとれたものがおいしいといわれました。

「ツバス、ハマチ、メジロ、ブリ」(関西)
「ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ」(関東)

ことわざではありません。これは全部同じ魚、ブリの名前です。このように成長するにつれ名前が変わる魚を出世魚(しゅっせうお)といいます。

「年取り魚」
昔、大晦日(おおみそか)は「お年取り」とよばれ、この日に食べる魚を「年取り魚」と言いました。西日本での「年取り魚」はブリ、東日本ではサケを食べます。

「一杯(いっぱい)茶飲めば坊主(ぼうず)にあう」
一膳飯(いちぜんめし)、一杯汁(いっぱいじる)、一杯茶(いっぱいちゃ)はお葬式(そうしき)で死者へおそなえしたり、参列者にささげるもので縁起(えんぎ)が悪いのでよくないといわれました。一杯しかお茶を飲まないと不幸がおきてお坊さんにあうようなことになるという意味です。

「宵越し(よいごし)の茶は飲むな」
一夜おいたお茶は毒だから飲まないように、という教えです。時間をおいたお茶は香りもなく、消化を悪くするしぶい味の成分が水に溶け出し、あまりおいしいものではありません。

「よい茶の飲みおき」
高級でおいしいお茶を飲んだあとに、いつまでもそのいい香りが口の中に残っていること。

コメ

「米の字の祝い」
米の字を分解すると「八十八」になります。このことから八十八才のお祝いを「米寿(べいじゅ)の祝い」や、「米の字の祝い」といいます。

「青田から飯になるまで水加減」
米は、田にあるうちから飯を炊くまで収穫量も、味も、水加減に左右されるという意味で、どんなことも加減が大切という教えです。今は炊飯器(すいはんき)で簡単に炊ける(たける)お米ですが、かまどで炊く場合は水加減がむずかしかったのです。